社会保険料の削減には注意が必要
少子高齢化の進行により、社会保険の財政は悪化しています。
また、年金、医療、介護、そして子育てに関して、新たな政策が立てられ、負担が増えるかもしれません。
ですので、健康保険、介護保険や厚生年金保険の保険料が引き上げられる可能性を、避けられない事実として、認識しておくべきでしょう。
さて、あなたの会社では、社会保険料の削減について検討されたことはありますか?
それとも、すでに実施された後でしょうか?
税金を減らすことと同様に、社会保険料を減らすことを検討している経営者がいらっしゃると思います。
しかし、社会保険料の削減により、労働条件の変更・低下となる場合がありますので、注意が必要です。
経営者が労働条件を考慮せずに、一方的に実施すれば、労使トラブルになる可能性がありますので、経営存続上の要件と厳格で適正な導入手順が必須と考えます。
労働者は自身の権利を守るために、社会保険料の削減による賃金の手取り金額の変化だけでなく、傷病、障害や失業時に社会保険から受け取る給付金額の変化を、しっかり確認してください。
社会保険料の削減方法とはどのようなものか
労使トラブルを回避するために、社会保険料の削減方法がどのようなものかを、労働者に知っていただきたいと考えます。
古くから、一般的に用いられている社会保険料の削減方法をご紹介しますが、他の方法も存在することを申し添えます。
(会社の就業規則や賃金規定も確認しましょう。)
入社日は月初め、退職日は月末の前日とする
1日だけの違いで、保険料は1か月分必要、不要となるのです。
短時間労働者を活用する
社会保険に加入しなくてよい労働日数、労働時間であれば、被保険者になりません。
昇給を7月にする
毎年4月から6月までの給料で社会保険料が決定(定時決定)されるので、4月から6月までの給料を少なくするのです。
保険料額表の等級の上限を活用する
等級は●●円以上○○円未満となっているため、同一等級であっても賞与を除いた給料の年間合計では差が生じてしまうのです。
給料を等級の上限額に設定すると、保険料が割安となります。
厚生年金保険の標準賞与額の上限を活用する
高額な賞与を受け取る人については、賞与を年1回にする等により1回に受け取る賞与の額を、厚生年金保険の標準賞与額の上限額を超える額にするのです。
賞与が上限額以上になっても厚生年金保険の保険料は、上限額の場合と同じ額になります。
常勤の役員を、非常勤の役員にする
役員の仕事内容を勘案し、社会保険に加入しなくてもよい程度の労働日数、労働時間で勤務可能であれば、非常勤の役員にすることで、被保険者から外すことができます。
休職期間を短くする
私傷病で休職している期間について、給料の支払いがない場合でも社会保険の被保険者であるために、保険料が発生します。
休職期間を短くすることで、長期欠勤時の保険料対策となります。
ご注意
すでに述べたことと同様ですが、本当に認識していただきたいので、再度申し上げます。
社会保険料の削減方法を実施することで、労働条件の変更・低下となる場合があります。
(社会保険からの給付金額が減る場合もあります。)
納める社会保険料は、社会保険の給付の基礎である平均標準報酬額に連携しているといえますので、給付金額の計算式に直結しているともいえます。
労使トラブルとならないように、法的に適切な手順で導入することが必要です。
このWebページの趣旨
上記の内容は、社会保険料を不当に少なくすることを、意図しておりません。
このWebページは主に下記の二つの趣旨で記述いたしました。
会社の経営存続にリストラが避けられない状況となった場合に、人員整理を行う前の解雇回避努力の一つの方法として、社会保険料の削減でどのぐらい効果が生じるのか、検討してほしいこと。
(社会保険料の削減により、雇用の継続が可能であるか、検討してほしいこと。)
賃金制度の変更を伝えられた労働者が、自身の手取り金額だけでなく、傷病、障害や失業時に社会保険から受ける給付金額が少なくならないかを、しっかり確認してほしいこと。
(社会保険料と給付金額の関係を知って、労働条件の変更・低下にならないか確認してほしいこと。)